横浜で1番長いカウンターがあるバー(山下町ケーブルカー)

ホテルニューグランドでの会合の帰り、久しぶりにケーブルカーに立ち寄った。

19時過ぎ先客のいない店内に入るとカウンターの、手前3分の1くらいの席に案内されて座る。

ここは入り口から近すぎず、店の奥に伸びる長いカウンターを遠く見通すこともできる特等席かもしれない。横浜で1番長いカウンター

職場が移転し、山下町を離れてから25年以上経ち、当時は裏通り然としていて休日でも人影が少なかった関帝廟通りが今や平日の昼間でも沢山の観光客で賑わうなど、その間中華街界隈は目まぐるしく変わった。

そう、横浜中華街は常に進化を求め成長し続けている街だ。

そんな中で、山下町勤務当時仕事帰りによく立ち寄っていた3軒のバー、ノルゲ、ウインドジャマー、そしてケーブルカーは、今も当時とほとんど変わることなく私を迎え入れてくれる。

長いカウンターの向こうの長いキャビネットに所狭しとボトルが並んでいる光景は壮観だが、食にしても酒にしても通とは程遠い私が先ず頼むのは銘柄ではなくジンフィズ。

カウンターに座りシェーカーの音が聞こえると、あぁ今日も1日が終わったなという気分になり、気持ちが切り替わる。

一杯目のグラスが空になる頃には心が緩くなって色々なことが頭に浮かび始め、前回この店に来た時にここのオーナーが好きだというハンクウイリアムスが流れていたのを思い出した。

ハンクウイリアムスといえば、学生時代ケニーロギンス、ウエイロンジェニングスと並びよく彼の曲を聴きながらバーボンを飲んでいたのを思い出した。

当時は今ほど輸入ウィスキーが安くなく、並行輸入でないワイルドターキーなどは10,000円前後もしたので私が飲んでいたのは1番安く手に入ったバーボンデラックスという酒で、この頃はほとんど見かけることもない。

そんなわけで私にとって安酒というイメージがあるものの、決してまずいわけでなくどちらかというと大好きだが、ターキーやジャックダニエルといったメジャーどころに隠れた地味さゆえもう出回っていないのかもしれない。キャビネットにはボトルが所狭しと並んでいる

目の前のキャビネットに所狭しと並んでいる大量のボトル、もしやと思いバーテンダーに声をかけるとなんと1本だけ、しかもシングル一杯分だけ残ったバーボンデラックスがあった。

聞くところによると、今は醸造所の閉鎖などでバーボンの生産量が全般的に下がっているそうで、人気銘柄以外にはなかなか原料も供給されにくい状況でバーボンデラックスも現在では細々と並行輸入に近い形で入っているのみらしい。

バーボンを取り巻く現状を初めて知ったが、期せずして懐かしの銘柄に出会え、バーテンダーの気遣いで店内に流れ始めたハンクウイリアムスを聴きながらしばし再会を楽しんだ。

3杯目はワイルドターキーのライをこれまたロックでじっくりと味わった。

会計を済ませて店を出る時に若いバーテンダーがひとこと「バーボンデラックスを探して仕入れておきます」接客する人が若返っても良い店の品格には年々磨きがかかるものだと思った。

また必ず来ますよ、ケーブルカー。