谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜

2018年6月10日 日帰り(谷川岳登山指導センターに前泊) 6名 交通手段:自家用車 アプローチ:谷川岳ベースプラザ駐車場

谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜は、私が初めてホンチャンに参加した場所だ。私が所属している山の会では毎年この山行が行われるが、希望者が多いながら参加できる人数は限られ初参加の人が優先されるので再度の参加は難しい。

なので、私も今年はダメ元で申し込んだが偶然欠員が出て参加がかなうことになった。

直前までCLを悩ませた天候判断

どんな山行でも一般参加者に比べリーダー、特にCL(チーフリーダー)の責任は当然大きい。

もちろん一般参加者も観光旅行ではないので連れて行ってもらうという意識は捨て現地の状況や地形など充分に調べて参加しなければならないし、ましてクライミングや沢登り雪山などでは参加者一人一人が充分な技量と知識を持って臨むことが求められるので一般参加者が無責任でいいということではないが、天候を読んで決行・中止、あるいは転進する決定をする責任はリーダーに大きくかかってくる。

天候が安定している時期ならそういった心配は少ないが、梅雨入り間もない時期で遥か太平洋沖とはいえ台風発生の知らせが入ってくるとなると尚更だ。

ただでさえ危険が伴うクライミング、我がリーダーも大いに悩み何日も前から発表された天気図と首っ引きで当日の天気予測に取り掛かかった結果上越国境の谷川岳を避け、天候の安定がみられそうな方面に転進する決断を前日夜に発表したが、その後の天候の推移から当日は転進先の方の天候が悪化しそうだと見るや再び谷川岳の計画を決行することになったのが出発の5時間前、出発当日会社から直接現地に向かうつもりで装備を載せた車を仕事場近くのパーキングに止めておいた私はゲレンデ用のタイトなクライミングシューズを用意していたので、アルパイン用のシューズを取りに急遽自宅に戻り、そのついでに自分のパソコンを立ち上げて保存してあるのを取り出すよりは早かろうと途中にある図書館に寄り谷川岳のトポ図を入手して待ち合わせ場所に向かった。

登山指導センターで前泊

関越道を降りてから食料調達に立ち寄ったスーパーの先で雨が少し降ってきたがすぐに止んだ。

谷川岳登山指導センターに先客がいなかったので思い思いの場所に荷物を拡げ夕食を摂ったが、その後も誰も来ず結局当日宿泊したのは私達だけだった。

夜中の2時頃外を歩いていく人の話し声で目が覚める、この分だとギリギリまで天候を伺っていた人たちがまだ後からやってくるかも知れない、岩場が混むのは困るがとりあえず雨は降っていないらしいとわかり一安心して寝た。

登山指導センターは20時で消灯になる

3時に起床し指導センターを4時に出発。朝食中に3パーティーが指導センターに登山届を出しに立ち寄り、うち1パーティーは仙ノ倉山へ向かう若者グループであと2パーティーが南稜と中央稜へ向かうとのこと。

若者グループは指導センター前の水場を当てにしていたらしいが、今日はチョロチョロとしか出ていなかったので戸惑っていた。

一ノ倉沢出合からテールリッジ、取り付きへ

一ノ倉沢出合に着くと雪渓の向こうにそびえ立つ衝立岩が見える。去年来たときにはモルゲンロートで赤く染まっていたが、今日は上部にガスがかかり陰鬱な雰囲気で一層威圧的だ、これからガスが上がってくれればいいいのだが。

出合の綺麗な公衆トイレ前で装備を整え雪渓の上を歩き出す。

下山時最後の懸垂下降をする衝立前沢の滝を見ると水量がずいぶん少ない、雪解け水があまりないのかな?指導センター前の水場がチョロチョロで一ノ倉沢出合の水場はほとんど枯れていたのもこれを見れば頷ける。

この夏の東京の水事情は厳しくなりそうだと思った。その割に先週南陵を登ったメンバーから聞いていたとおり雪渓の量は多くテールリッジとの境目も隙間なく雪が残っていて、雪渓からテールリッジへはすんなりと上がることができた。雪渓からテールリッジへは容易に登れた

中央稜取り付きに到着すると、雪渓を歩いているときにテールリッジを登っている姿が見えたパーティーが準備に入っていた、朝食中に指導センターに立ち寄った顔ぶれだ。2+2で先行パーティーが登っているのを見ながらしばらく待機する。待っている間束の間だが雲の隙間から日が射した

登攀開始

私達6人は2パーティーに分かれ3人ずつで登攀、前日に決めた私達のパーティーの受け持ちピッチはUさんが1・4・7、Aさんが2・5、私は前回2・5・8だったので今回は3・6をリードすることにした。

1ピッチ~3ピッチ

1ピッチ目、リードのUさんが明るいスラブをスルスルと順調に登り、一旦岩陰に隠れ再びチラっと見えた先で支点が切られ私達も後に続く、トポではⅣとなっているが危なげな所はない。

左上の赤い服の人がいる辺りに支点がある

次いで2ピッチ目はAさんがリードで岩を左に回り込むようにトラバースしてから緩い傾斜を上がって行く。ここは私が初めてのホンチャンのリードをした所で、どこでピッチを切っていいか迷い手前と奥にある支点の間を行ったり来たりした覚えがあるが、今回行ってみるとどうしてそんなに迷ったのかわからなかった。

2ピッチ目はトラバースでスタート

3ピッチ目は私がリード、残置スリングに手をかけトラバースしてフェースに出て直上すると先行のパーティーが2組いたのでリードをビレイしている手前の方の支点にセルフをかけロープアップする。

先行パーティーのリードが少々手こずっているようで、セカンドが登り始める頃にはUさんとAさんも登って来た。

4ピッチ~6ピッチ

4ピッチ目は2組目パーティーのセカンドが適当なところまで進むのを見てからUさんが登り始めたがここの短いチムニーが登りの核心、チムニーを越える所でスローダウンした先行パーティーのセカンドに近づきすぎないようにペースを合わせながらUさんが登っていく。

4ピッチ目のチムニーを登るAさん

5ピッチ取り付からは南稜や中央カンテが良く見渡せ、登っているクライマーが米粒のように小さく見える。思わず「よくあんな所登っているな」と口にすると、先週南稜を登って来たメンバーから南稜から見ると中央稜も同じように見えると言われ、なるほどと思った。

5ピッチ目終了点の手前はジメジメとした苔っぽい岩が現れ、傾斜は大したことがなく階段状に近いが滑りやすいので慎重に進んだ。

6ピッチ目、私がリードで登り始めるとすぐ先の懸垂支点で先行グループがリードビレイをしていたのでしばらくそこで待機、ピッチを切る場所を間違えてしまったらしい。その先も大した傾斜ではないが屈曲しているので長いヌンチャクを多用したにも関わらず終了点間近ではロープの重みを感じながらの登攀になった。

7ピッチ~衝立ノ頭直下

7ピッチ目Uさん8ピッチ目Aさんリードで進むがいずれも傾斜は緩くそろそろ登り行程も終盤の雰囲気。

最終の9ピッチ目は一旦右に下る方向にも踏み跡があるがそのまま直上してからクライムダウンして終了点に登り返すルートをとる、ここはいくつも踏み跡がありリードのUさんはピンが打ってある所まで登らず我々が思っていたより低い位置で右方にトラバースして衝立ノ頭直下の終了点に向かって登るルートを進んだ。

それとは知らずAさんと私はピンを目がけて更に直上してしまい、ロープを上に振って戻しながら進むことになったが、ピンからクライムダウンするところが結構危なっかしいのでUさんが辿ったルートが正解かもしれない。最終ピッチ終了点から見たクライムダウン箇所、下から上がって来た方が正解か?

北稜から下降

下降ルートは、略奪点にあるピナクルを目指し北稜から懸垂下降を繰り返した。

終了点から踏み跡をたどった懸垂支点から40mを2回、更に藪の中を真っ直ぐに40m、岳樺を目指し40mに加え25mそれぞれ懸垂した後に空中懸垂をしてカールに下り更にピナクルに向け20m懸垂下降する。

藪の中を懸垂下降

 

ピナクル直前の空中懸垂

ピナクルでクライミングシューズからアプローチシューズに履き替え雪渓をトラバースして衝立前沢を下り、行きに見た衝立前沢から本沢に注ぐ滝で最後の懸垂下降をして一ノ倉沢出合に戻ったが、雪渓は去年の半分くらいの幅しかなく衝立前沢にもほとんど水が流れていなかったのでピナクルから先の下りはあっけないほどだった。

ピナクルでシューズをはきかえ下山する。

ピナクルで休んでいるとやっとガスが晴れ朝日岳と笠ヶ岳が姿をあらわした

本沢の雪渓を下っているとシラネアオイが可憐な姿を見せていた。   

一旦は実施が危ぶまれたが、リーダーが最後まで諦めないで絶妙な判断をしてくれたお蔭で今年も中央稜を登ることができた。

お疲れ様、一ノ倉沢出合から林道を歩くこと1時間弱、登山指導センターにデポした荷物を回収して一路帰途に就いた、、、

コース情報

登山指導センター4:00 ー 4:50一ノ倉沢出合5:00 ー 11:45衝立ノ頭直下12:10 ー 17:15一ノ倉沢出合

MAP

岩場の反射でGPS軌跡は大荒れ!

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GPSデータ