2021年3月14日 天気:晴天 人数:2人 交通手段:電車、バス
ついに懸案のザンザ洞キレットへ
丹沢を歩き始めて間もなくからザンザ洞キレットのことが気になっていた。
同角山稜にあるザンザ洞キレットはオオタギリのように下ってから登り返して通過するのではなく、キレットの上にかかっている桟道を渡って越える。
懸垂下降もしないしロープも使わず誰でも越えられるので、山と高原地図でも同角山稜は実線ルートになっている。
ただ、問題はその桟道の高さだ。
ヤマレコなどの記録を見ると人によってだが、数10mはあるらしく中には100m近いと書いてあるものもある。
これまでも10mや20mの高さに掛かっている桟道を歩いたことは数知れないし、20mだろうが200mだろうが落ちればだいたい似たようなことになるのは判っている。
それよりもっと危なっかしい谷川岳や北アルプスのクライミングもしてきているのに、なぜかザンザ洞キレットだけは”怖い”という気持ちが付いて回り、同角山稜を歩きたいとは思っていても、なかなか近づけないでいた。
そんなザンザ洞キレットに行く時がついにやってきた。
山の会の仲間から、同角山稜に行く会山行を企画しないかと声がかかり、ルートとコースタイムを調べて計画書を完成させ、いつ下見に行こうかと思っていた矢先、豪雨で翌日の雪山山行が中止になったという山仲間から、快晴予報が出ている明日丹沢に行く予定があったら一緒に行かないかと声がかかり、渡りに船とばかりに快諾した。
寄から寄大橋
2019年の台風19号被害で玄倉林道が通行止めになっているので、寄から雨山峠を越えるのが同角山稜取り付きのユーシンロッジに行く最短距離になる。
もっとも玄倉林道が歩けるようになってもどちらもコースタイムは3時間ほどであまり変わらないが、峠越えが無い分だいぶ足が楽だが紅葉の時期は別として単調な林道歩きが強いられるので、どちらがいいのか悩ましいところだ。
玄倉林道が通行止めで選択の余地がない今回は、7:55新松田駅発寄行き始発バス(平日は6:55発)に乗り、8:20寄バス停に着く。
快晴の下寄に着いたバスの座席がほぼが埋まるほど乗っていた乗客はみな登山客だったが、私たち以外誰も寄大橋に向かう人の姿はなかった。
中津川沿いに坂道を上っていると、どこかの団体が訓練しているのか川の向こうの林の中にツエルトを張っている人たちの姿が見えた。
寄大橋に向かう途中の河原でもコンロを出して食材を焼いている人の姿があったが、豪雨の中昨日からキャンプしていたわけではないだろうから朝やってきて早くもバーベキューの支度にとりかかっているのだろう。
河原でビールを飲んでいる人を見てうらやんでいるうちに赤い寄大橋が見えてきた。
タクシー2台に分乗してきて寄大橋のゲートで支度している中高年の女性グループの横を通り、登山口に向かう。
寄大橋から雨山峠
水源の森の間を通り林道を歩く。
昨夏ここに下って来た時に崩落して高巻き道が作られていたアスファルトの道路は修復が済み、巻き道だったところは作業道として立ち入り禁止になっていた。
林道が終わり登山道に入り少し上ると道が二手に分かれていてそこに新しい道標が立っている。
古い道標のときには水平路を進む左側も登っていく直進方向も共に雨山峠と書かれていたと記憶しているが、新しい道標は上に登る方だけ雨山峠と書かれ左側には雨山峠の表記は無かったがいつも通り左に進むとすぐ河原に出て、右上からもう一方の登山道が合流する。
なぜわざわざ高巻きさせるのか、何か理由があるのだろうが、、、
河原に出てから幾度となく渡渉したが、昨日の大雨にもかかわらず源頭が近いからか水量は普段とほとんど変わらず足を濡らすことなく渡ることができ、渡渉箇所には黄色い目立つ道標が立てられていて以前のようにルーファイに戸惑うことも無い。
沢筋を辿るルートなので大雨のたびにルートが崩落したり流されたりしても、すぐに補修の手が入るのがありがたい。
沢筋ルートらしいといえば、寄沢の沢床を歩く箇所には水が出ても流されない空中道標がありここの名物のようになっている。
空中道標が現れると雨山峠が近い。
雨山峠からユーシンロッジ
峠らしい、静かな佇まいの雨山峠。
雨山峠から木の枝越しの富士山はとてもきれいだったけれど、写真に撮るとこんな感じ。。。
箒沢公園橋から出る新松田駅行き最終バスの発車時刻が18:58ということから逆算して、11:30には着きたいと思っていた雨山峠に10:30に着けたのでとりあえず時間切れタイムアップの可能性は少なくなりホッとした。
雨山峠からユーシンロッジまでは雨山沢沿いのルートをひたすら下る。
この沢も2019年の台風19号の被害を受け、きれいなナメ沢はガレに埋まり沢沿いの登山道もあちこち崩れている。
脆い砂状の足元に気を付けながら下っていると、行く手30~40m先を左から黒い塊が落ちてきたと思ったら右の急斜面を飛ぶように上がっていく。
身のこなしの素早さに一瞬サルかと思ったが大きさからクマか?と考え掛けてすぐにカモシカだと気付いた。
ハッキリ姿が見えないうちに斜面の陰に登って行ったので諦めて足を進めていくと、斜面を回り込んだ先の僅か20mほど先に立ち止まりまさに山の仙人然としてこちらを見下ろしていたので、なんとか写真を撮ることができた。
丹沢で初めてのカモシカとの遭遇に興奮し、しばらくカモシカの話をしながら歩くとやがて林道が見えてきた雨山橋に到着する。
雨山橋から熊木沢出合や尊仏ノ土平などへは行けるが、玄倉方面の林道は2022年3月まで台風被害の復旧工事のため歩行者も通行禁止とのことで、今年の紅葉の季節も玄倉からユーシンに入ることはできない。
雨山橋からユーシンロッジに向かう林道も途中で大きく崩れている箇所があり、いつになったら今までのように軽自動車でロッジの手入れに入れるようになるのだろうかと思った。
昨年の夏に、塔ノ岳から尊仏土平に下って寄に抜けたが時間が押していて立ち寄れなかったのでユーシンロッジ前の広場に足を踏み入れるのは何年振りだろう?
橋を渡った先の広場のミツマタを間を通り、ロッジの広場の日当たりの良いベンチで昼食を摂った。
ユーシンロッジから石棚山稜
ここまでは、標準コースタイムより約1時間早く着いたがここからは急登が続くので油断はできない、昼食を手早く済ませて大石山に向かう。
ロッジ左手にある道標に従い、橋を渡ったところから取り付くとすぐにこれが一般登山道?と思うような急登が始まり、ひと登りすると東屋が見えてくる。
東屋を過ぎると傾斜は多少緩やかになるが、それでも急登にはかわらず汗だくになって登る。
コースタイムと日没時間からある程度日が長い時期でないと途中で暗くなってしまう恐れがあるが、気温が高い時期には登りたくないと思った。
東屋を過ぎ、登り始めてから40分ほどで船の舳先のような大きな白い岩が見えたと思ったら、それが大石だった。
下から回り込むようにして大石の上に出るとまるでクジラの背のようで、上に身を乗り出すと絶景が広がり、正面には雨山山稜右手には少し山陰に隠れた富士山が見える。
大石を過ぎ、20分ほど登ると山名標のある大石山に到着し、ここは更に展望がよく富士山の全景が見渡せた。
大石山の先から同角山稜が本領を発揮し始め、丹沢にもこのようなところがあるのかと思うような長い鎖場に続き、ハシゴや痩せ尾根が現れる。
そうこうしているうちに現れた本日のメインイベント、ザンザ洞のキレット、、、
う~ん、やっと会えましたな、、、という感じ。
なんか木の枝が両脇にびっしりあって下まで見通せないけれど、渡りながら下を覗くと地面がずっと下の方にあったような。
歩くと桟道がしなって風が吹いてきたこともあり、怖くて立ち止まって写真を撮ることはできなかった、、、
次はこの下のザンザ洞で沢登りしたいな。
今回想定していなかったもう一つの難所が、同角ノ頭が直登できず右にトラバースしたこと。
途中に倒木があってこれを越えるのだけれど下をくぐることができず、仕方なくトラバスルートの斜面に倒れている苔苔どろどろの倒木をベリーロールみたく抱きつくように越えたんだけど、これが気持ち悪かった~
その代わりと言っては何だけど、同角ノ頭の先では本日最高の富士山と南アルプスが見えた。
山と高原地図を見ると同角ノ頭と石棚山稜はどちらから行ってもコースタイムが同じになっているので、その先は真っ平だと高を括っていたら様子が違う。
その途中には中ノ沢乗越という鞍部があって、どちらから行って登り返すからコースタイムが同じっていう話。(等高線も見てりゃ判るわな(-_-;))
中ノ沢乗越といえば何年か前に経角沢を詰めてから小川谷に向かって中ノ沢径路から玄倉に戻った時に通ったところ、あの時は霧が濃かったなぁ。
同角ノ頭から下って中ノ沢乗越からの登り返しは思ったほどしんどくなく、最後はゆるゆるとトラバースして石棚山稜の苔むしたベンチに到着。
初めての同角山稜は思っていた以上に眺望がよく、天候にも恵まれ絶景を堪能でき、新緑の季節・紅葉の季節にも来てみたいところだった。
西丹沢VC17:05発のバスにはどんなに頑張っても間に合いそうにもないのでのんびりと歩きギリギリヘッデンを使わずに箒沢公園橋に到着。
コースタイム
寄バス停8:20~8:50寄大橋~9:49釜場ノ平~10:29雨山峠~11:03雨山橋~11:26湯0新ロッジ11:50~12:57大石山~14:31同角ノ頭~14:55中ノ沢乗越~15:23石棚山稜~16:10石棚山~16:25ヤブ沢ノ頭~17:58箒沢公園橋