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大同心正面壁雲稜ルート(八ヶ岳)

大同心正面壁雲稜ルート

2019年6月22日ー23日 1泊2日 天候:1日目 曇り 2日目 晴れ時々曇り

メンバー:7名 交通手段:自家用車 アプローチ:赤岳山荘駐車場(1,000円/日)に駐車

40年ぶりに訪れた八ヶ岳山域

学生時代に雪山講習で雪洞を掘ったり赤岳に登ったりして以来足が遠のいていた八ヶ岳に、大同心正面壁雲稜ルートを登りに行った。

大同心は、横岳と硫黄岳を結ぶ縦走路沿いにある岩峰で赤岳鉱泉から見上げると横を向いた人の肩から上のような独特な形状をしていて、下からはよく見えないが横岳に隣接して小同心と名付けられている同様の岩峰があり、共にクライミングの対象となっている。

ここの岩の表面はコンクリートの壁に半分埋まった石ころがボコボコと顔を出しているような形でガバホールドが多い反面、中には引っ張るとすっぽ抜けそうな岩や浮石が多いのに加え、1ピッチ目と最終ピッチは少々かぶっていているという。

初めての岩質と慣れないかぶり気味のルート、最近の練習不足を悔いながら当日を迎えた。

1日目

中央高速を小淵沢で下り美濃戸口からの悪路を車の下回りをぶつけないように注意して赤岳山荘上の駐車場に着くと、広い駐車場はほぼ満車に近かった。

駐車場から赤岳鉱泉まで2時間弱の道のりは、自動車が走れるような林道をしばらく歩き、大雨の時には洗い越しになりそうな橋を過ぎたら一旦樹林帯に入り林道をショートカットし再びに林道へ、右手に作業小屋をやりすごして大きな堰堤を過ぎたところから登山道に入り、幾度も渡渉を繰り返しながら登って行くが、川の流れや苔むす樹林帯の岩に目を癒されながらゆるゆると登って行く感じで、テン泊装備とガチャを担いでいても苦にならない。

歩き始めて1時間半ほど経ったとろこで先頭を歩いていたメンバーが、この先大同心が見えるところがありそこを過ぎると15分くらいで赤岳鉱泉に着くと話していたが、残念ながらガスに阻まれて大同心を望むことはできなかった。

赤岳鉱泉に着きテントを設営し終えると小屋の横にある屋根付きのベンチに集まり、小屋で買った缶ビールで乾杯し明日の打ち合わせ兼昼食をしていると、ガスが晴れて阿弥陀岳から赤岳を経て硫黄岳に至る稜線が見えはじめ、そこに大同心の姿もあった。

樹林帯の向こうの見上げるほどの高さにその取り付きがある大同心正面壁を見ていると、明日自分がそこを登るのだという実感が徐々に湧いてきた。

いよいよ大同心の実物を目にしてテンションが上がった私たちは話に花が咲き、昼食からそのまま夕食そして酒盛りへと移行し、明朝3時に起きるために19時過ぎに就寝した。

2日目

2:30頃埼玉県越谷から来た高校山岳部員たちが朝食の支度をする音に目を覚ましたが、そのままうとうとして3:00を知らせるアラームで起床。

昨夜11時頃に1度起きて見上げた空は星空だったが、ガスが出ているのか星は見えなかった。

夜中は思ったほど冷えず、いつの間にかシュラフカバーの中でシュラフを胸の下まで下ろしていたほどだったが外は寒いのでテントの中でお湯を沸かして朝食にした。

朝食を済ませ装備を整えて4:15ヘッデンの明かりを頼りに赤岳鉱泉を出発。歩き始めて50分経とうという頃すっかり明るくなった樹林帯の向こうに大同心が見えてきた。

一旦大同心の基部まで登りそこに荷物をデポしてから下に降り、所々崩れている草付きをトラバースして取り付きに向かう。

大同心取り付き(赤丸)

昨夜の打ち合わせで私たち3人パーティーは1・4ピッチ目をNさん2・5・7ピッチ目をSさんそして3・6ピッチ目を私がリードで登ることに。

準備を待つ間に景色を眺めていると、遠くの空に北アルプスの山々が見えた。

1ピッチ目をリードで登りはじめたNさんの姿がかぶった岩の向こうに見えなくなったと思うと間もなくロープが止まり、思いのほか早くビレイ解除・ロープアップが始まる。

ロープが張られ、初めて経験するタイプの岩質を確かめながらゆっくりと登っていくと夜の間に冷えた岩に触れる指先がとても冷たい。

1ピッチ目をSさんとフォローする

話に聞いていた通りコンクリートの壁に埋まった石が顔を出しているような岩壁で、場所によりクライミングジムにあるような手でぐっとつかんでぶら下がれるほどのガバホールドも少なくないが、どこか脆そうな岩質ですっぽ抜けないか不安がつきまとう。

ホールドの具合を確かめながら、かぶっている岩を登りきるとすぐ目の前にビレイしているNさんの姿があり終了点に着いた。そこには3人が待機できるほどのスペースしかないが終了点から2ピッチ目のルートを見上げると7mほど先にも支点があったので、取り付きで寒さに耐えて待っている後続パーティーに声をかけ登り始めてもらう。

私が終了点に着くと間もなく2ピッチ目をリードするSさんが到着し、Nさんから受け取ったロープを結んでスタート。先の支点を越えたあたりから左上していくのを見ているとSさんのロープにはセンターマークだけでなく4分の1の位置にもマークをつけてあるのに気づき、あとで尋ねると残り10m程度になったら支点を探し始めるためだと聞きなるほどと思った。

3ピッチ目を私がリード、Ⅳだから登れそうなところを拾っていけば迷わないよと言われてスタートし、左手から登り始めるとすぐにピンがあった。

このピッチは今までより傾斜が緩くなり草付きが現れる。岩質もさっきまでのボコボコとホールドが浮き出したものではなく、ツルっとした固そうな岩で、砕けた岩がゆるい傾斜に重なり溜まっているところもあり、落石を起こさないように草付きを歩いて土が着いたソールで足を滑らせないように神経を遣った。

4ピッチ目は再びNさん、1ピッチ目を短めに切ったことを意識してかぐんぐんロープを伸ばして先へ進んでいる様子。40m以上進んだかな?というあたりでやっとロープが止まる。

フォローだということもあり、厄介だと聞いていたスタートの凹角をスムーズに登りロープを追っていき、傾斜が緩み階段状になったところで手を触れた人の頭ほどもある大きな石がグラッと傾いてドキッとした。手を触れないよう、足に触らないように通過して顔を上げるとバンドをトラバースした先でビレイしているNさんの姿が見える。

1ピッチ目は短いと思ったが、トポ図より2ピッチ少ない5ピッチでドームを登り切ってしまうようだ。

トラバースの途中に出っ張っている岩をのけ反るようにかわすイナバウアームーブを駆使して終了点に到着。

イナバウアートラバース
ヌンチャクが掛かっている岩をのけ反り通過した

終了点から見下ろすと地上には影大同心が現れていた

最終ピッチはSさんがリード、核心は上部の薄かぶりだがゆっくりと慎重に登り始めたSさんのペースは終始変わらず、どこで核心を越えたかわからないスムーズなロープの伸び具合のまま終了点へ到着、さすがです。

最終ピッチをリードするSさん

小同心と横岳を望みながらの最終ピッチは高度感抜群!フォローでよかった。

小同心を登っている人が見えた!

横岳の山頂には両手を挙げている人が、硫黄岳に向かう稜線にはハイカーの列が見えた

核心部に下がっていた残置スリングが輝いて見え、吸い寄せられるようにA0しちゃったけれど次回はフリーで越えたい!

トップアウトして3人で握手を交わし、ほとんど無風で燦燦と日が当たり暖かなドームの頭で後続2パーティーの到着を待つ。

大同心のドーム頭でくつろぐ私たち
(小同心を登攀していたパーティーの方提供写真)

7人揃ったところで再度全員で握手を交わし、記念撮影をして昼食を摂りながら周囲の展望を堪能した後大同心ルンゼを経由して基部でデポした荷を回収し赤岳鉱泉へ下った。

ウルップソウ

大同心ルンゼへ下る懸垂点

赤岳鉱泉でテントを撤収してベンチで大同心登攀の余韻に浸りながら軽食(我ながらよく食べると思う)を済ませ、駐車場へと向かう途中の渡渉点で振り返ると、行きには見えなかった大同心が今度ははっきりと見えた。

コース(タイム)

1日目 赤岳山荘駐車場 10:00 - 11:50 赤岳鉱泉

2日目 赤岳鉱泉 4:15 - 5:30 大同心基部 ー 5:30 大同心取り付き 5:55 ー 8:40 ドームの頭 9:45 ー 11:30 赤岳鉱泉 12:30 ー 14:00 赤岳山荘駐車場

マップ

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GPSデータ

 

 

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