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平成最後の富士登山!

日程:2018年9月17日 日帰り 天気:晴れのち曇り 人数:単独 形態:ピストン 交通手段:自家用車

天候に祟られた今年の夏

普段丹沢を中心に活動しているので、年に数回のアルパインクライミングのホンチャン山行は私にとって遠くの山に行く数少ない機会になっているが6月の谷川岳では天候に恵まれたものの、8月の北穂高岳滝谷ドームは荒天となり釜トンネルをくぐることさえ出来なかった。そして、9月の北岳バットレスは直前で仕事が入り参加を見合わせたが結局天候が崩れて山行そのものが中止になってしまった。

今夏の山岳遭難件数が過去最多の721件になった要因のひとつとして、例年より晴天の日が多かったからだと先日の日経新聞の朝刊で報じられていたが、私の周りに限ってはこの夏は天候に祟られることが多かったようだ。

こうして、この夏はアルプス3,000m級の山への登山はできずじまいになってしまった。

アルプスがダメなら富士山に、、、

昨年、初めての富士登山では太陽が顔を出したのは登りの僅かな間だけで、途中から降り出した雨は山頂で一瞬の青空を覗かせた以外降り止まずせっかく富士山に登ったのにほとんど景色を味わうことができずに霧雨に視界を閉ざされた大砂走りを駆け下りて来てしまったので、今年こそは晴天のもと下界の景色を楽しみたいと思い2度目の富士登山を願っていた。

ところが山の会の山行予定日だけでなく私の休日に合わせるように崩れる天候に、富士登山をする時期を見いだせないまま9月10日に夏の富士山登山シーズンも終わってしまった。

2度目の富士登山は誕生日

9月10日は晴れか雨かといえば天候は良かったのだが風が強そうだったので諦めたのだが、次の週末の予報を見ていると3連休に気温が上がって首都圏では夏日になりそうだという。

富士山頂は平地より23~24度は気温が低いので風による体感温度の低下も考えると横浜辺りで30度近くあるとあまり寒い思いをしないで済みそうでありがたいので、3連休にロックオンして山天をチェックする。

私の職場は世間で言う3連休の初日が出勤なので16日か17日のどちらかにに行くことにしてチェックしていると、どちらも晴れそうだがどうも17日の方が気温が高いようなので3連休の最終日ということで帰り道の混雑は気になったが、自分の誕生日にあたる17日に決行することにした。

前日16日、準備万端済ませて家でゴロゴロしながら夏季シーズンが終わっても登る人ってどのくらいいるのかなと考えていたらFacebookに知人の投稿が入ったので見ると、真っ青な青空を背景に富士山頂の剣ヶ峰でポーズを決めている知人の写真がアップされていてちょっと安心した。

富士山へGO!

山頂から日ノ出を見るのではなく景色を楽しみながら富士山に登ることが目的なので3時か4時に登り始めようと思い、22時過ぎに家を出た。順調に行けば自宅から御殿場ルート登山口の新五合目まで2時間弱で行けるので仮眠を取る時間は充分ある。

昨年は大砂走りで汚れた靴やズボンの裾から火山灰でできた細かい砂を洗い落とすために10リットルの折りたたみのポリンタンに水を入れていったところ、水がない新五合目の駐車場でとても役に立ったので今回も水を満たしたポリタンを車に積み東名高速道路を走っていると、厚木インターを過ぎた辺りでポツポツと雨が降り出し、御殿場インターに着く頃には本降りになって来た。

また雨かよ~と思いながら、途中のコンビニで晩酌用のビールを買って新五合目に向かうと富士スカイラインに入った辺りでいつの間にか雨は上がり、新五合目に着いたときには頭上に満天の星空が拡がっていた。

夏季シーズンを終えているので第一駐車場にも一般車が止められるようで何台かポツリポツリ止まっていて秋は充分だったが、狭い第一駐車場を避け自車の明かりも他車の明かりも互いに気遣わずに済む広い第二駐車場の隅に車を止めた。

セカンドシートとサードシートを倒してベッドにし、暖かいのでシュラフには入らず下に敷きムーンルーフのカバーを開きガラス越しに星空を見ながらビールを飲み、つかの間至福のひとときを過ごした。

山頂を目指して登山開始

あれ?足が重い

セットしておいたスマホのアラームで目を覚まし、第一駐車場に車を移動させて出発準備をする。事前情報で新五合目の公衆トイレは9月10日を過ぎても開いていることは確認していたが、シーズン中同様に24時間使えるかは不明だったので心配だったが幸い使用できた。

鳥居をくぐり登山道に向かう、見上げると遥か上富士山の斜面に先を登って行く人のヘッデンがチラチラと光って見える。

鳥居には装備が不十分な登山者の入山を禁止する警告が掲示されている

大石茶屋の前を過ぎ、大きな三脚を担ぎゴム長靴を履いてゆっくり歩いている2名の先行者の横を挨拶をして追い越す、おそらく頂上に向かっているのではなくどこかで写真を撮るか何かの作業をしに行くのだろう。

ぶら下げたラジオで演歌を聞きながらのんびり歩いている2人はあっという間に後ろに遠く離れラジオの音が聞こえなくなりほっとする。昨年はペースが速すぎたのか八合目辺りで両足のふくらはぎと太ももの4箇所を同時に攣ってしまうというひどい目に遭い、今回は足攣りだけは起こさないように最大限の用心をするつもりでやって来たので足に余計な負担をかけないよう、足場の良い所を選んでゆっくりと足を置きながら歩いていたが、どうも足が深く沈みすぎて重いような気がしてスマホを取り出しジオグラフィカで昨年自分が歩いた時に取ったログを見ると、下山ルートに入り込んでしまったらしくずいぶん右を歩いていることがわかり、徐々に左に寄り轍状にこんもりした砂の帯を越えると無事登りルートに入ることができ、足元が固く歩きやすくなった。

昨年はブル道を横断した際に間違ってブル道に入ってしまったので、今回は気をつけていたのだがどうやら大石茶屋の上の分岐ですでに下山ルートに入ってしまっていたらしい。

夜が明けてきた

駐車場を出発した時刻は昨年より1時間ほど遅かったが、時期がひと月ずれていることもあり昨年とほぼ同じく登りルートと下りルートが交差する次郎坊辺りで周りが明るくなって来た。

振り返ると雲の向こうに見え始めた光の点が見る見る大きくなり、雲の上から光が溢れだし、いま私は誕生日に昇る朝日を富士山から見ている。

富士山から誕生日の日ノ出を望む

新六合目にある山小屋跡で休憩をとり、ザックを下ろしておにぎりを出して食べていると、途中で休憩していた単独の人が追いついて来たので二言三言言葉を交わした。昨年はここで初めて山に登るらしい若い男女がいて、疲れてぐずる彼女に男性がつっけんどんな態度で接している場に出くわした、彼らはいまも続いているのだろうか?

新六合目から見上げると青空を背景に頂上の方までくっきり見える、山天では静岡県側は午後積乱雲に注意となっていたが、この分なら頂上からの眺望も望めそうだ。

新六合目から見上げると青空を背にくっきりと山頂が見える

やっぱり3,000m峰、空気の薄さを体感

昨年の足攣りの記憶は強烈だった。寝ているときにふくらはぎや土踏まずを攣ったりすることはあっても太腿を攣った経験はあまりなかったが、両足のふくらはぎと太腿の4箇所を同時に攣るという初めての経験、しかも富士山の八合目で。

シーズンオフになり道標の支柱からは看板が外されている

その時は周りに大勢の人が歩いていて人目に付きたくなかったので平静を装って道端の石に腰掛け休憩を取る振りをしながら、救急セットの中から芍薬甘草湯を取り出して飲んだが、なかなか効かなかったのでもう一袋追加したら攣っていた筋肉が緩んでひと心地ついた。それから先は、再び攣るまいと攣った筋肉に刺激を与えないよう薄氷を踏む思いで一歩一歩登った。

昨年はこの辺りで足攣りを起こして休んだ

今回はその轍を踏まないようゆっくり歩みを進めたので、その甲斐あってか昨年足を攣った辺りまで来ても両足は疲労もせず、足を攣る気配は感じなかった。今思えば、登り下りが交わりシーズン中で込み合っている所を歩いていて、前を歩いている人に道を譲られながら歩くペースを上げたり下げたりしていたのがいけなかったのかもしれない。

八合目を過ぎ、息を吸っても充分に吸った気がしなくなって来る。一歩足を運ぶのに体力を使うなぁという感じがして、更に強風が吹き始める。あまりに風が強いので向かい風が吹いているときに息を吸うと吸った以上に勝手に空気が入って来る、、、なのに息を充分に吸えていない気がするのは、空気が薄くなっているからか。

予定通りの、いやそれ以上のペースで登って来ている、天気はそう崩れそうにもない。周りに人はいないので前にも後ろにも気を遣う必要はないからマイペースで歩こう。そう自分に言い聞かせながら、せっかちな自分がじれったくなるような速度でゆっくり歩き、息が切れそうになったら座って休む。ハイドレーションをもって来ているが歩きながら水を飲むとむせそうなので、水を飲みながら立ち休みしては登る。

雲が湧き上がり、時折強い風が吹き付ける

普段ランニングしているのになんでサッサと登れないのかとじれったくなる一方で、何しに富士山に来たの?早く登って帰るため?ゆっくり周りを見て楽しめばいいのにと心が囁く。

九十九折を過ぎ山頂へ

すでにシーズンを終え閉鎖され小屋の名前の看板も外された赤岩八合間の前を通り過ぎ、山腹を右に巻いて行くとやがて視界が開けて遥か彼方の山頂に続く九十九折の登山道を示す白いロープが見える。

昨年は悪天候の中視界が利かず気が付いたら頂上の鳥居が見えたが、こうして下の方から見えるのも善し悪しで、体調が体調だったら心を折られるのに充分な光景だ。

頂上の鞍部に向かいルートを示す白いロープが長い九十九折を描いている

新六合目で一緒になった人が遥か上を歩いているので、とりあえずそこまでを心の目標にして登る。七合目辺りから頂上でご来光を見てお鉢巡りを済ませて下山して来る人たちとすれ違い始め、九十九折ですれ違う降りて来る人がなんだかうらやましく見える。

でも、ゆっくりでも歩いていると確実に先に進み、いつの間にか頂上の鳥居をくぐっていた。

強風のお鉢巡り

まずは剣ヶ峰

御殿場ルート頂上の鳥居をくぐると先を歩いていた人が休憩していたので、互いにお疲れ様と言って労をねぎらい合う。剣ヶ峰には行かずそのまま引き返そうか迷っているようなので1人剣ヶ峰に向かい歩き出す。

頂上浅間大社奥宮を過ぎて火口越しに青空を背景にした剣ヶ峰を目の当たりにする、ここでしか見ることが出来ない唯一無二の風景を目の前にし、今年もここへ来ることができてよかったとつくづく思った。

剣ヶ峰の左側には急登を登る人影が見える

剣ヶ峰に向かう急斜面を登ると左手に広がる駿河湾が雲の切れ間から見える、相変わらず風が強いが時折吹く風の中に生暖かい空気を感じた。

雲の向こうに見える駿河湾、時折生暖かい風が吹いてくる

剣ヶ峰では何組かのグループが休憩していたり互いに写真を撮りあったりしていて賑わっていたが、もちろんシーズン中と比べると遥かに人数は少なく、なんといっても皆しっかりした装備を身に着けている人ばかりだった。

お鉢巡りで強風に遭う

まだ昼には早かったのでお鉢巡りをしながらどこか景色が良い場所で昼食にしようと剣ヶ峰から下り火口沿いに歩き始める。

お鉢巡りは雄大な富士山の頂上火口を約1時間かけて1周する

西側が開けて南アルプスが見える所まで来た途端冷たくて強い西風が吹き始める。前方からこちらに向かって歩いて来る人が途中で腰を低く落とし耐風姿勢を取るのが見え、私も歩いているうちに断続的に吹いていた強風がどんどん強まり、時々立ち止まって踏ん張らないと転びそうになった。

南アルプスが見えるが、この辺りから立っていられないほどの風が吹き始めた

前から歩いて来た人はガッチリした体格の男性だったが、耐風姿勢を取ったまま立ち上がれず風が弱まるのを待っている。すれ違いざまに挨拶の声をかけたが、風を避け下を向いたままの相手にかけた声はおそらく風にかき消されて届いていないだろうと思う。

吹きさらしを過ぎると一旦風は弱まったが、その後全般的に風が強まって来たらしくどちらの方向からも強風に見舞われ、半袖シャツでは寒くなりソフトシェルを着て手袋で防寒した。

結局お鉢巡り中は昼食を摂れず、御殿場ルート頂上の小屋の陰で風を避けながらカップ麺と菓子パンの昼食を摂った。

下山はやっぱり霧の中

下山開始

昼食を済ませる頃には下界から上がって来た雲が九十九折の上まで迫っていたので、下山することにした。

昨年は下山するときに登戸下りが同じルートを取る八合目辺りまでちょっとした渋滞が発生してやきもきしたが、もちろん今年は下山もガラガラで私の前を行く人は遥か下を歩いている。

登りと違い下りは霧の中で、九十九折のロープも先まで見えずひたすら下って行くとやがて山腹を左に巻く道になり、山小屋の前を通過。

下山は今年も雲の中

いくつか通過する山小屋はいずれも閉鎖され小屋の名前も外されているが、小屋の前に七合目と書かれた石を目印に大砂走りへと登山道を右に下る。

お砂走りをひた走り

登ってきたルートを逸れてすぐ、ブル道を横切った所から始まる大砂走りは最初のうち大きな石が転がっていて歩きにくいが、宝永山への分岐を過ぎると足元が深い砂になり走りやすくなる。

大砂走りに入ってからスマホのランニングアプリを動かし、ランニング記録を取り始める。走り出す、大砂走りの説明には1歩3mと書かれていたが、1歩踏み出すと着地した足がそのまま何十センチか砂に潜りどんどん距離を稼ぐ、どすんどすんと足を運んでも砂地がショックを吸収して膝には全く響かない。写真を撮るために立ち止まろうとしたが勢いついたままなかなか止まれず、結構な急傾斜を駆け下りているのだと実感した。

走り出して1kmが過ぎスマホアプリがレポートをアナウンスする、「距離1㎞、平均速度9′30″1キロあたり」、、、え?自分ではものすごい速度で転げるように走っているつもりだったが、ウォーキングに毛が生えたくらいの速度で走っていたようだったので意外だった。

立ち止まると後ろからザッザッザッザッという軽快な音がして振り向くと、トレランシューズを履いて小さなザックを背負った人が飛ぶような速さで駆け下りてあっという間に去って行った。やはりハイカットの登山靴に40リットルのザックとは違うようだが、それにしても速い。

登りでは快晴の下景色を楽しむことができたが下りは昨年同様霧の中、それでも雨がふらなかったのは幸いだった。

やがて傾斜が緩み走っても加速がつかず、大きなリュックを背負って登山靴を履いてジョギングをしているだけになったので、走るのを止めランニングアプリをオフにして距離を確認したら3㎞少々だった。

その頃には霧が晴れ始め、まだまだ続く大砂走りのずっと先の方にさっき私を追い抜いた人が走る姿が小さく見えた。

傾斜が緩んでからもまだまだ続く大砂走り

覚悟していた3連休の最終日、、、それにしても

新五合目から家路に就き交通情報を確認すると、、、3連休の最終日でそれなりの渋滞は覚悟していたが、連休渋滞に加えて事故で東名高速は大井松田まで30㎞の渋滞、ナビの指示通り246を選ぶものの一般道は自己渋滞回避の車で溢れかえり、自宅に着くまで5時間を要した。

コースタイム

御殿場新五合目04:25ー05:19次郎坊ー06:48御殿場口新六合目ー08:11御殿場口七合四勺・わらじ館ー08:44御殿場口七合九勺・赤岩八合館ー10:00御殿場口頂上ー10:19富士山10:29ー10:47金明水ー10:54久須志岳ー11:24富士宮口頂上ー11:34御殿場口頂上11:41ー12:26御殿場口七合九勺・赤岩八合館ー12:45御殿場口七合四勺・わらじ館御殿場口七合ー13:02御殿場口下り六合(走り六合)ー13:21次郎坊ー13:41大石茶屋ー13:48御殿場口新五合目

【GPSデータ】

歩いたルート

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